2009年8月24日月曜日

~コラム~ 「伝える、待つ」というソーシャルワーク

とあるアメリカのソーシャルワーク雑誌に次のような風刺画があったそうです。


視力障害のあるクライエントが白杖を使い歩いていました。その先には穴があります。


一人のワーカーは何も言わずに穴を埋め、クライエントは何も気づかずに歩いて渡ることができました。

もう一人のワーカーは「穴があるぞ。」と遠くから伝え、クライエントは「大丈夫」と言った為、何もしないでいるとクライエントは穴に落ちました。次にワーカーは穴の上から「上がりますか?」と声を掛けクライエントが「上がります。」と言うとワーカーは梯子を降ろしクライエントはやっと前に進むことができました。


私は愚行権(愚かな行い=間違いをする権利)というのが人にはあると感じます。

「何が適切であるのかは本人が決める。」という基本を忘れないように支援すべき介護支援専門員が、ともすれば穴を先に埋めてしまっている現状はないでしょうか?

専門職のアセスメントとは、もしクライエントが穴に落ちた時にでも前に進む力があるかを見ていくものかもしれません。

2009年8月17日月曜日

~コラム~ 認定調査のドタバタの整理

認定調査が揺れ動いているが、そのドタバタ劇を整理してみることにした。


【2009年】
1月:新認定基準「認定調査員テキスト2009」公開

2月:調査員、審査会委員の研修がスタート

3月9日:認知症の人と家族の会「要介護認定方式についての意見」を厚労省に提出

3月12日:介護保険を持続・発展させる1000万人の輪「要望書」厚労省に提出

3月16日:厚労省「要介護認定の見直しについて(介護保険最新情報Vol.66 )」で一部修正

3月19日:認知症の人と家族の会「要介護認定方式についての意見II」を厚労省に提出

3月24日:厚労省「本年4月からの要介護認定方法の見直しについて(介護保険最新情報Vol.70 )」で一部見直し「認定調査員テキスト2009」を修正

4月13日:厚労省「要介護認定方法の見直しに伴う経過的措置の『第1回要介護認定の見直しに係る検証・検討会』における議論について(介護保険最新情報Vol.76 )」で「経過措置」を提示

4月17日:厚労省「要介護認定等の方法の見直しに経過措置について(介護保険最新情報Vol.80 )」で「経過措置」を通知

7月29日:厚労省「要介護認定の見直しに係る検証・検討会における検討結果について(介護保険最新情報Vol.106_1 、106_2 、106_3 、106_4 )」

8月11日 厚労省 認定調査員テキスト2009改訂版(案)及び介護認定審査会委員テキスト2009改訂版(案)の掲載について


*情報は日経BP http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090804/172296/ を参照し作成。


これだけ動くということは「今回の認定そのものに根拠が薄い。」と感じざるを得ない。

生活を続ける高齢者、また保険料を納付している被保険者、また税が投入されていることを忘れてはならない。

第4回福祉用具における保険給付の在り方に関する検討会資料(平成21年8月7日開催) ,第1回医療・介護改革調整会議資料(平成21年8月11日開催)

情報提供です。

第4回福祉用具における保険給付の在り方に関する検討会資料(平成21年8月7日開催)

結論としては「今後も議論を続けていく。」とのこと。



第1回医療・介護改革調整会議資料(平成21年8月11日開催)

新しく設置された委員会の情報です。今までの論点が資料として示されています。

2009年8月11日火曜日

~コラム~ 介護保険最新情報Vol108より

介護保険最新情報Vol108です。(宮城県ホームページに飛びます)

一次ロジックをそのまま使うなんて暴挙でしかない。


給付抑制を行うために、すでに4月14日の検討会でこの落とし所にすることが決定されていたのではないか?

そもそも、48時間タイムスタディを見ていく時には、「認定調査の内容あって」の1次ロジック作成ができると考えるのが一般的である。


タイムスタディの方法が見えないのに、1次ロジックは据え置きとは・・・・・


ケアマネジメントは主たる業務をかけ離れ給付抑制の手段としてローカルルールがまかり通り、それに和をかけて要介護認定を軽度化するとは、すでに介護保険の信頼は地に落ちたのではないか!


信頼のない公的保険ほど無意味なものはない・・・・しかも介護保険料は年金から天引きである。


天引きをするなら、それなりの信頼を勝ち取ることが先決である。

2009年8月9日日曜日

~コラム~ 略語で遊ぶ

今回はお遊びネタで・・・・以前研修を受けた時の内容をやや編集しただけ・・・


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略語表記を思い切って使ってみました編(当然、実際のケースではありません)

**さん(M)が発熱し、QQにて**HpにADとなる。AHとの診断。
HpでVF検査・ST訓練を行ったところPO困難とのことでTFが適当であるとの判断。PEG予定となる。
PEG増設後、1M程度でENT許可がでた為、妻、CM、MSW、DSスタッフとでCCを行った。
妻はMRがありながら、MRの娘と同居。長男はMRの仕事をしており、転勤も多いとのこと。
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略語を略さずに表記

**さん(男性)が発熱し、救急にて**病院に入院となる。急性肺炎との診断。
病院で嚥下検査や言語聴覚士による訓練を行ったところ、経口摂取困難とのことで経管栄養が適当であると判断。胃ろうの予定となる。
胃ろう増設後、1か月程度で退院許可がでたため、妻、ケアマネージャー、医療ソーシャルワーカー、デイサービススタッフとでケアカンファレンスを行った。
妻は僧帽弁閉鎖不全があり、精神発達遅滞の娘と同居。長男は医薬情報担当者の仕事をしており、転勤も多いとのこと。

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略語は便利だが、使い方には注意が必要です・・・

2009年8月8日土曜日

~コラム~ 生活保護の在り方について

100年に一度の大不況の中、失業者が増加している。
また、失業ではなくとも日雇い労働、ネットカフェ難民などディーゼントな生活が脅かされている昨今であることが報道されている。

昨年末~年始にかけての派遣村騒動などが落ち着きつつある中、もう一度社会保障や生活保護の在り方について考えてみた。

~コラム~ セーフティーネットの役割と危機~でも述べたとおり、日本はセーフティーネットの手法として保険方式を多様している。

雇用保険もその一つであり、いく度の改正は行われているものの「期限付きの保険」であることに変わりはない。期限付きであることは、モラルハザードを防ぐためにも必要であろうが、そもそも雇用保険の制度設計上、「仕事は探せばある」ということが前提にある。

さて、タイトルの通り生活保護はどうであろうか? 生活保護の制度設計においても「仕事は探せばある。」が前提となっており、「働ける=保護は受けられない。」という構造である。

生活保護法が昭和25年に制定され、雇用保険法は昭和49年に制定されたが、当時の状況と現在の働き方(働かせ方との表現が適切か?)に大きなかい離が生じているが、制度設計そのものは見直されていないことが問題であろう。


セーフティーネットである雇用保険が期限付きであり、その期限を過ぎた時にファイナルセーフティーネットである保護の受給ができないというのは、憲法25条の生活をどのように守っていくのであろうか。

現在の生活保護は需給制限(給付抑制)で入りにくく、また一度需給を受けると出にくい制度となっており、すでにモラルハザードが起きている。

生活保護はファイナルセーフティーネットとして「入りやすく出やすい制度」となるよう、ハローワーク、住宅関連と共同しながら、現在のワークバランスに合った制度設計を再構築すべき時期に来ていると感じる。

~コラム~ みなし2号被保険者の整理

40歳以上65歳未満の特定疾患であり、生活保護により医療扶助を受けている者(俗に言う「みなし2号」「介護扶助10割」)のサービス利用の整理。

【基本となる法令】
介護扶助と障害者自立支援法に基づく自立支援給付との適用関係等について


障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について
が根拠法令である。


【補足性の原則】
みなし2号は介護保険の被保険者ではないため、介護保険10割分を生活保護の介護扶助により給付される。

生活保護には「他法優先(補足性の原則)」の考え方がある為、介護保険法の訪問介護は10割負担となる為、障害者自立支援法の居宅介護や重度訪問介護が優先されることになる。

しかし、障害者自立支援法に規定されていない訪問看護や訪問入浴が必要な場合は介護扶助が行われることとなる。

介護扶助を行う場合、セルフプランは認められず、専門職である介護支援専門員が必要なサービスを利用できるように調整することとなる。


【要介護認定】
みなし2号以外:本人(代理人)⇒介護保険保険者
みなし2号  :保護課⇒介護保険保険者に認定調査を依頼⇒保護課に結果を回答⇒保護課が最終的な介護度を決定

2009年8月5日水曜日

~コラム~ セーフティーネットの役割と危機

セーフティーネットと言えば、まず思いつくのが生活保護。しかし、生活保護になる前に国は様々なセーフティーネットを「保険」という方式で導入している。

雇用保険、労災保険、年金保険、医療保険、介護保険である。

1)雇用保険、労災保険は労働に関する金銭保障(一部、現物給付もある)。
2)年金保険は高齢や一定の状態になった際の金銭保障。
3)医療保険、介護保険は利用サービス、介護サービスが必要になった際に現物給付(サービスをそのまま受け取れる)生活保障。

荒く分けると上の1)~3)ようになるだろう。
また関連するものには、住宅関係や障害者関係の政策なども保険ではないが、セーフティーネットとして機能している。

日本ではこういったセーフティーネットを利用しても憲法25条で保障されている「健康で文化的」な生活が保障されない場合に、ファイナルセーフティーネットである生活保護の受給を受けることになる。


さて今回焦点を当てるのはファイナルセーフティーネットである生活保護ではなく、日本のセーフティーネットが保険方式ということである。

保険方式ということは、保険加入者が保険料を支払い保険事故が起きた歳に保険加入者に現金や現物を給付するという方式である。
社会保険はそのものだけでは足りないため、税金も相当額投入されることになっている。
つまり、保険加入者と保険未加入者には「差」を設けて、加入者には税を利用し、未加入者は恩恵を受けることができないというシステムである。

社会保険は防貧制度であり、生活保護は救貧制度であるという前提に立つと、「保険料を支払えない人は防品制度に加入できない」というシステムであることがわかる。

日本のセーフティーネットの脆さがここにあり、社会保険というセーフティーネットは機能せずに、すぐファイナルセーフティーネットである生活保護を受給せざるを得ない状態がここにある。

他方で、保険制度というのは目的税であるともいえ、その保険目的以外には利用できないということであり、国民の政治不審などから、日本には保険方式が多様される傾向にある。この傾向が顕著に表れたケースが、細川内閣が「福祉目的税」を導入する案を出した際に、国民の反発から介護保険に一気に流れた時である。

しかし、年金を例にみると「目的外」で使われていたことが発覚し、また不適切な管理により保険加入者でさえ保障が受けられるのか未確定な状態であることを露呈してしまった。
また、派遣労働のように雇用保険に加入したが保険事故の際に保険が利用できないことも露呈された。
他の社会保険にも「同様に起こっているのではないか?」との怖さを感じる。

保険方式である以上、加入者より多くのお金を集め、それを保険事故に再分配しているため、多くの加入者がいないと成り立たない。

1961年に国民皆年金・皆保険が始まって以来、ここ数年は社会保険の危機あり、国民に信頼される制度となるよう努力をしないと、日本のセーフティーネットは破たんする。