2009年8月5日水曜日

~コラム~ セーフティーネットの役割と危機

セーフティーネットと言えば、まず思いつくのが生活保護。しかし、生活保護になる前に国は様々なセーフティーネットを「保険」という方式で導入している。

雇用保険、労災保険、年金保険、医療保険、介護保険である。

1)雇用保険、労災保険は労働に関する金銭保障(一部、現物給付もある)。
2)年金保険は高齢や一定の状態になった際の金銭保障。
3)医療保険、介護保険は利用サービス、介護サービスが必要になった際に現物給付(サービスをそのまま受け取れる)生活保障。

荒く分けると上の1)~3)ようになるだろう。
また関連するものには、住宅関係や障害者関係の政策なども保険ではないが、セーフティーネットとして機能している。

日本ではこういったセーフティーネットを利用しても憲法25条で保障されている「健康で文化的」な生活が保障されない場合に、ファイナルセーフティーネットである生活保護の受給を受けることになる。


さて今回焦点を当てるのはファイナルセーフティーネットである生活保護ではなく、日本のセーフティーネットが保険方式ということである。

保険方式ということは、保険加入者が保険料を支払い保険事故が起きた歳に保険加入者に現金や現物を給付するという方式である。
社会保険はそのものだけでは足りないため、税金も相当額投入されることになっている。
つまり、保険加入者と保険未加入者には「差」を設けて、加入者には税を利用し、未加入者は恩恵を受けることができないというシステムである。

社会保険は防貧制度であり、生活保護は救貧制度であるという前提に立つと、「保険料を支払えない人は防品制度に加入できない」というシステムであることがわかる。

日本のセーフティーネットの脆さがここにあり、社会保険というセーフティーネットは機能せずに、すぐファイナルセーフティーネットである生活保護を受給せざるを得ない状態がここにある。

他方で、保険制度というのは目的税であるともいえ、その保険目的以外には利用できないということであり、国民の政治不審などから、日本には保険方式が多様される傾向にある。この傾向が顕著に表れたケースが、細川内閣が「福祉目的税」を導入する案を出した際に、国民の反発から介護保険に一気に流れた時である。

しかし、年金を例にみると「目的外」で使われていたことが発覚し、また不適切な管理により保険加入者でさえ保障が受けられるのか未確定な状態であることを露呈してしまった。
また、派遣労働のように雇用保険に加入したが保険事故の際に保険が利用できないことも露呈された。
他の社会保険にも「同様に起こっているのではないか?」との怖さを感じる。

保険方式である以上、加入者より多くのお金を集め、それを保険事故に再分配しているため、多くの加入者がいないと成り立たない。

1961年に国民皆年金・皆保険が始まって以来、ここ数年は社会保険の危機あり、国民に信頼される制度となるよう努力をしないと、日本のセーフティーネットは破たんする。

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